トラフィックをアトリビューション分析する。
webサイトのトラフィックを経路別にセグメントして比較することはアクセス解析の基本である。その比較によりユーザーの行動や、改善点を把握することが出来る。
但しこのトラフィック分析も、従来のラストクリックモデル(※1)からのデータでは適切な数値が出ない可能性がある。
近年はテクノロジーの進歩により、アナリティクス等でも簡単に、CVに至るまでの過程(パス)を把握し、間接効果を知ることが出来るようになった。(このような”特定の効果に対する要因、導線などの間接効果を分析すること“をアトリビューション分析という。ただしアナリティクスで測定できるのはあくまでクリックベースのものだけである。)
今回はGoogleアナリティクスのマルチチャネル機能を使いアトリビューションを分析する。トラフィックを均等配分モデル(※2)と従来のラストクリックモデルで比較してみる。
今回はサンプルデータとしてサイトA(BtoCサイト)のデータを利用する。まずラストクリックモデルではトラフィック毎のCV数は以下のようになる。
※1 ラストクリックモデルとは”CVに至る直接のクリックのみ”を分析対象とした一般的なモデル。
※2 均等配分モデルとは、初回の流入元、中間の流入元、ラストの流入元のそれぞれに対してCVへの貢献度を均等に振り分けるモデル。(つまりCVの過程に経たクリックも、CVへのクリックと均等に評価して貢献度を割り振る)
媒体 | Cv数 | 割合 |
---|---|---|
有料検索 | 48 | 12.31% |
ノーリファラー | 89 | 22.82% |
オーガニック検索 | 183 | 46.92% |
参照元サイト | 70 | 17.95% |
合計 | 390 | 1 |
※上記データは資料性を損なわない範囲で多少改変してある。
上記を見ると、最もCVが発生しているのがオーガニック検索で、その次にノーリファラー、参照元サイト、有料検索と続く。このデータを見ると、今後の施策としてCV発生数の高いオーガニック検索でのトラフィック増加を優先順位高く設定するのが通常ではないだろうか。
⇒ちなみにノーリファラーからのCV数がこれだけ高いのは、当モデルサイトが比較的リピーターが多く、かつ積極的にメールマガジンを配信しているからである。
今度はマルチチャネルからCVの導線レポートをエクスポートし、全ての導線を均等配分モデルにてスコアリングしてみる。
データを取得した2ヶ月間で導線は約250パターンあり、パス数は1~50程度まであった(※1)
※1 CVの導線は各コンバージョンやトランザクション到達前の 30 日間でのコンバージョン経路や一連のインタラクションを基に作成される。
媒体 | CV貢献度 | 割合 |
---|---|---|
有料検索(貢献度) | 27.4 | 6.89% |
ノーリファラー(貢献度) | 219.0 | 55.15% |
オーガニック検索(貢献度) | 116.4 | 29.31% |
参照元サイト(貢献度) | 30.5 | 7.69% |
(その他)(貢献度) | 1.7 | 0.42% |
ソーシャルネットワーク(貢献度) | 2.1 | 0.53% |
合計 | 397 | 1 |
上記のグラフを、左記ほどのラストクリックベースと比較し、その差分を算出してみる。(CV数の合計が先ほどのデータと7件異なるのはアナリティクスの性質上、データ取得方法によって誤差が生じるためだと思わえる。CV7件の誤差では全体的な影響は少ないため、ここではこのまま分析を進める。)
媒体 | ラストクリックモデル | 均等配分モデル |
---|---|---|
有料検索 | 48 | 27.4 |
ノーリファラー | 89 | 219.0 |
オーガニック検索 | 183 | 116.4 |
参照元サイト | 70 | 30.5 |
(その他) | 0 | 1.7 |
ソーシャルネットワーク | 0 | 2.1 |
合計 | 390 | 397 |
※ここではマルチチャネルのCV導線レポートに表記されるソーシャルネットワークと(その他)を敢えて、他の指標に加えず残している。(貢献度は低いのでそこまで全体の数値に変化がないと思われる。)例えば本来であればソーシャルネットワークはラストクリックモデルでは参照元サイトからのトラフィックに入るだろう。
上記からラストクリックモデルと均等配分モデルでは大きく数値が異なることが分かる。具体的にはノーリファラーの数値が大きく上昇し、有料検索、オーガニック検索、参照元サイトの数値が減少している。ラストクリックモデルではオーガニック検索が全体のCVに占める貢献度が高かったが、均等配分モデルにて間接効果も把握すると、ノーリファラーが最も高くなる。つまりノーリファラーはCVを発生させるアシストにおいて大きな効果を示す。
※勿論このデータはサンプルサイトAのものであって、全てのサイトが普遍的にこの様な状態になるということではない。(但し従来のラストクリックベースを変えると、ほぼ間違いなく何らかの数値変化は起こるだろう。)
上述した通りこのサイトにとってノーリファラーからのCVの大半はメールマガジンである。メールマガジンがこれだけCV貢献度が高いのであれば、改善するために投資する価値は十分ある。「メールマガジンの開封率(またはサイトへの流入率)を数%上昇させるだけでCV数を大きく上昇させられる」と仮設立てすることが出来る。
アトリビューション分析はまだまだ議論の余地がある手法だが、データを解釈する精度が高まればそれだけ効率の良くサイト運用することが出来る。(そして間違いなくアトリビューションはデータ解釈の精度が高まる概念である。)
今回書きたかったことはアトリビューション的な視点がないと今後のwebマーケティングにおいて正確なデータ解釈が出来なくなるということだ。例えばSEOにおいても、オーガニック検索内でのユーザー行動に貢献度をスコアリングをすると、今までとは状況が異なる可能性がある。
マルチチャネルを見ていると分かるが”刈り取り形”と言われる検索行動内でも認知的なキーワード、または直接CVするキーワードと傾向があり、単純にCVRやトラフィック量のみでキーワードのパフォーマンスを測定することは出来ない。例えば従来では費用対効果が悪いと判断されたキーワードも、実はアシスト的な意味でパフォーマンスが高かった、などと分かるようになる。その辺りも今後検証したい。