検索エンジンからのトラフィック構造を把握する
最近Googleは意図的な外部リンクをかなりシビアにチェックしている。(過去記事参照)
そのため特定の検索キーワードにおいて大きく順位を下げたサイトは多いだろう。
そしてもしかしてこういう状況もあるかもしれない。”日々定点観測し重要な指標として追ってきたあるキーワードの検索順位が下がっても、不思議なことにトラフィックは思った程には下がらない”。もしそんな状況に心当たりがあれば、SEOに対する姿勢を変えるべきかもしれない。そのためにはまず運営サイトの検索エンジンからのトラフィック構造を正確に把握するべきだ。今回はトラフィック構造把握の重要性について解説したい。
適切なサイト設計ができていて、ロングテール的なキーワードで集客が行われているサイトは、そもそも単体のキーワードが全体のトラフィックに占める割合は小さい。
例えば上記を見ていただきたい。
これはあるポータルサイトの、検索エンジン経由でトラフィックが発生しているキーワードを上から順番に並べ、それらが一体どの程度全体の検索トラフィックに影響を与えているかを表したグラフだ。トラフィックが多い順に、上位10位、11~100位、101~500位、501~1000位、それ以降(1001位以降のキーワード)と比較してある。(データはGoogleアナリティクスなどのアクセス解析ツールから簡単に取得可能。)
こうして見るとわかるが、上位10位のキーワードが占める割合は、ほんの数%程度である。またそれに対して1001位以降のキーワードが占める割合は、実に62.5%ある。
※同様の主張はseomozの過去記事(web担の日本語訳ver)にも記載されている。
ページボリュームやコンテンツが多いポータルサイトでは検索エンジンへの露出が広く、それゆえに単体キーワードが全体的なトラフィックに占める割合は小さい。よって例え上位1キーワードが順位下落しても全体のトラフィックに与える影響は少ない。
(もちろん単体キーワードの上位表示に”意味がない”と言っているわけではない。ただしその影響を過大評価し、過度に時間やコストを投資するのは非効率的だ。)
もう一つの例を見てみよう。下記も僕が定点観測している、比較的小規模なBtoCサイトの同様のデータだ。
同じ観点から見ると、上位10位までのキーワードが全体のトラフィックに占める割合がかなり高いことが分かるだろう。(なんと52.9%も占めている)このサイトにおいて、もし上位10位の中で幾つかのキーワードの検索順位が下がった時、サイト全体のトラフィックは大きく減少するだろう。
こちらを見て「一般的なサイトはコンテンツも少なく、検索エンジンへの露出も少ないため、比較的上記のようなパレート的(偏りのある)トラフィック構造になるのではないか」と考える方もいるかもしれない。確かに傾向としてそれはあるかもしれないが、一概に断定はできない。小規模サイトでも適切に設計されたサイトであれば、ロングテール的な集客構造に近づくのだ。
上記のサイトは、ページボリューム的には、2番目に挙げた小規模なBtoCサイトとあまり変わらない。(約1000ページ程度)
しかし上位10位のキーワードがトラフィックに占める割合は低く、1001位以降キーワードの割合の高さから、さまざまなキーワードで集客できていることが分かるだろう。(実際に検索からのトラフィック数も2番目のサイトより大きい。業種が違うので単純に比較はできないが、検索経由のUU数は倍近く有る。)
ここで重要な点はサイトのトラフィック構造によって、SEO的に注視する点は変わるということだ。例えば大規模なポータルサイトや、小規模だけれどもロングテールで集客できているサイトを運営していて、数十程度のキーワードの検索順位をKPIとして定点観測しているだけでは、まさに木を見て森を見ずな状態となる。(そういう場合は検索トラフィックの具体的な数値をKPIとするべきだろう。)
また2番目に挙げたような集客キーワードに偏りがあるサイトは、選択と集中の観点からトラフィックの半数程度を占める上位10位程度のキーワードに積極的に投資してもよいかもしれない。(ただし単体SEOのブラックハット性による検索順位低下というビジネスリスクや集客効率の悪さ考えれば、長期的にはロングテール型に以降するためサイト改善は必要かもしれない。)
SEOに対する方向性や集客面でのリスクを明らかにするためにも、現状のトラフィック構造の把握は有意義だ。