上場企業4社の取り組みから見るSEO業界のトレンド
そろそろSEOで上場している各企業の決算関連資料が揃ってきたので、それをベースにSEO業界のトレンドを分析してみたいと思う。
ここでのSEOで上場している企業とはアイレップ社、アウンコンサルティング社、フルスピード社、システムソフト社の4社である。※各企業の決算期は異なるため単純比較は難しいことを予め了承いただきたい。
SEO市場のおさらい
まずはSEOという市場の規模と成長率をおさらいしておく。
クロスフィニティ社の調査によるとSEO市場の規模は2014年387億円、2015年には432億円になると予測している。09年-15年はCAGR(年間平均成長率)18%で成長するということになる。
インターネット広告全体のCAGRは8%なので、インターネット広告全体よりも高い成長率である。一方リスティング広告含む運用型広告は21%、スマートフォン広告は82%で成長していくと予測されている。
つまりSEO市場はインターネット広告市場と比較して成長率は高いもの、最新のアドテクノロジーが進歩している運用型広告市場や爆発的な速度で普及しているスマートフォン広告と比較しては劣っている状態である。
日本では2011年後半から外部リンクに対するペナルティメッセージが届き始め、外部業者が大きな打撃を受けた。
それでも2013年にクロスフィニティ社の調査にてSEO業界の2012年の市場規模が増加しているのは、国内大手企業でSEOへの費用の増加、スマホサイトへのSEO導入やコンテンツマーケティングに注目が集まり、市場規模が拡大したからだと結論付けている。
上場企業4社のSEOシェア
アイレップ社の2014年9月期 第2四半期の決算説明資料をみるとSEOをコアとするソリューション事業の売上は堅調に伸びていることが分かる。
前年の同時期と比較すると成長率は28%となる。SEO市場のCAGRは18%なので、市場の成長度と比較しても堅調にシェアは拡大していると判断出来る。
2011年アウンコンサルティング社の調査によるとSEO市場の中でアウトソーシングの市場は全体の約30%~40%となっている。間をとって35%と仮定すると、2013年のアウトソーシング市場は114億円ということになるので、直近1年間の売上規模から見るとアイレップ社はアウトソーシング市場の約11%のシェアを持っていることになる。
対してアウンコンサルティング社は市場の成長率18%に対して成長率は13%なのでシェアが減少している。停滞傾向にあると判断できる。直近1年の事業売上は3億程度になるので、SEO業界のシェアは約2.7%ということになる。
フルスピード社はセグメントの変更や決算期の変更によりSEO自体の売上は2012年7月期決算説明を最後にわからなくなってしまっているが、そのタイミングにて4.5億程度※1である。当時の売上規模から考えると市場の約3.9%のシェアを持っている。
※1 このタイミングで決算期の変更があったため前後売上高からの推測になる。
最後にパワーテクノロジー社と合併したシステムソフト社だが、2013年1月にパワーテクノロジー社、2013年10月にアップトゥーミー社を買収し、そのタイミング(2013年9月期第2四半期,2014年9月期第1四半期)にてWEBマーケティングセグメントの売上が大きく増加している。この会社の直近1年の売上規模は極めて大きく、16.7億円程度となる。これは市場シェアの14.7%を占めていることになる。
また営業利益率が30%オーバーとなっており、極めて高利益体質でSEOを行っていることが分かる。
※2012/2Q(2013/1)にパワーテクノロジー株式会社を合併している。
アウトソーシング市場のシェア
上場4社の決算関連資料からアウトソーシング市場のシェアを推測すると以下の様な構造になっていることが分かる。
(取得可能な情報からの推測になるので、あくまで参考値となる。)
上場しているSEO企業の中ではシステムソフト社のシェアが最も高く、アイレップ社、フルスピード社、アウンコンサルティング社が続き、4社で市場の約33%を占めていることが分かる。
上場企業4社の取り組み
また決算情報に記載されている各社取り組みや特徴をまとめると以下になる。
SEO施策の取り組みもスマートフォン対策、コンテンツマーケティングやマーケティングプラットフォームにシフトしてきていることが分かる。
市場が変われば新たなSEOの市場また生まれる。
上場企業4社の取り組みを見ていると、マーケティングプラットフォームへのシフト、スマートフォンへのシフト、コンテンツマーケティングへのシフトなど、市場の変化によってSEOのビジネスも移り変わることがよく分かる。
以下はSEO業界の流れのイメージ図になるが、SEOの方法が市場に合わせてシフトしていく以上、常に新しい市場が発生していくのは必然である。
外部リンクビジネスがgoogleアルゴリズムで難しくなった時、それによってSEOは終了するのではないかと噂が流れたが、検索エンジンやユーザーの検索ニーズに合わせて最適なWEBサイトを構築するSEOの本質は、ユーザーの検索行動がなくならない限り存在するし、また新たな市場はどんどん発生していくのだ。
SEOは終わることはないし、今後の市場の変化に対応しさらに変化していくだろう。